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執筆者の写真te to ba <手と場>

五島の豊かさを伝える、カフェ te to ba <手と場>

食とte to ba <手と場>


te to ba <手と場>のランチプレート(週替わり)


五島に移住をしてから9年目です。来たばかりの頃のお気に入りの場所は産直市場や無人販売でした。

信じられないぐらい新鮮な野菜や魚が私が住んでいた埼玉よりもずっと安く売られていました。

当時のわたしはまさかお客さんにご飯を食べてもらう日が来るなんて思ってもいませんでしたが、毎日毎日、五島産のものを食べているうちに、この豊かさをどうにか伝えたいとぼんやり思っていました。


豊かさというのは、豊富な種類があるというわけではありません。

むしろ、産直市場は朝採れたものが並んでいるので、台風の直後には何も(本当に何も!)並んでいないことも多々あります。

何が豊かなのか。

その不便さも含めて旬のものを旬の時期に調理できること、口にすることができることが豊かさだと思っています。


私が住んでいた関東のスーパーは365日、同じ食材が並んでいて「今日は、そうだな・・・にんじんと、きゅうりと・・・」とメニューを決めてカゴに必要な食材を入れていきます。毎日同じ食材が同じ場所に並んでいました。

五島の産直市場では季節が巡ると売っているものがガラッと変わるので、「先週食べたあれ、食べたい」と思ってもないことも多いです。こうなると、先にメニューを決めることができません。





メニューを決めるのは季節、そして五島。

この季節になると五島ではもう菜の花は終わり、スナップエンドウが旬野菜として産直市場に並び始めます。



冬には、かぶ、大根が売り場の半分を占めていて、寒い冬なのでなんとなく白いものはさらに寒く感じてしまってどうしようと悩むことも。大根はスペアリブと煮込んだり、かぶは生姜をたっぷり入れてあたたかい煮物にしたり。

寒い冬なので、なるべく温かいものを作る。

それだけではなく、野菜たちを干したり漬けたりして保存食も作ります。


そうこうしている間の、まだ寒い2月頃になると菜の花が少しづつ産直市場に登場します。

長い冬が終わる合図。「待ってました!!!!」と迷わず籠の中に入れます。

最初はやっぱりシンプルにおひたし。2回目に購入するときはピリッとからし和え。

今、五島のあちこちに綺麗な花を咲かせている菜の花ですが、お野菜の菜の花はもう、店頭には並びません。今はスナップエンドウや、春菊が少し並んでいます。

あと、春キャベツも美味しい時期ですね。



五島の豊かさを伝える、te to ba <手と場>カフェ

ぼんやりと思っていた「この豊かさを伝えたい」という思いはやがて、te to ba <手と場>のカフェの大切な芯となっていいきました。


食は、地域の漁業や農業と結びついている。言葉にすると当たり前なのですが、実際スーパーに行ってそんなことを考えたことはありませんでした。しかし、五島に来てから産直市場に毎日納品に来ているおばあちゃんがいること、生産者の名前が書いてあり名前から五島のどの地域の人なのか、少しだけ想像できその風景を頭の中に描くことができるようになりました。魚屋さんでは今日採れた魚でお値打ちのものを教えてもらうことでたくさん採れたことを知ったり、最近では逆に高騰している魚の値段を見ると温暖化による影響をひしひしと感じ取ることができています。



時に、生産者さんが作るのをやめてしまったことに気づくことも。

少し前まで並んでいたあの人の野菜。毎年楽しみにしていた野菜が、突然姿を消すことだってあります。



食は、地域に循環する。

私一人が五島の食材を使って食べているだけでは循環の中に与える影響はほとんどありませんでした。しかしカフェという場を持つことで、島外から来てくれた方にできる限り旬の野菜や保存食を食べてもらうことで、経済的な循環に加え今ある風景を守る環境面での循環にも貢献できてくるのではと思っています。

地域の環境に負荷をかけながら、人の好みに合わせたものを売る状態は、自分達の住む環境を犠牲にしていきます。

お店をやる上で、どうしても必要な食材で旬の時期に手に入らないものは他地域からの商品を購入することはもちろんありますが、できる限りこの土地を味わってもらいたいと考えています。





te to ba <手と場>のランチプレートや、小鉢は、決まったメニューがあるわけではありません。

飲食店としては決められたメニューを決められたレシピで作っていくことのほうが効率は良いかもしれません。


美味しいものを美味しい時期に食べてもらいたい。

もしくは五島の美味しいものをできるだけ多くの人に食べてもらいたい。


こんな思いから手を動かしています。


例えば今の時期だとトマトと新玉ねぎが最高に美味しいです。なので、極力シンプルな副菜をランチに添えています。


トマトは真夏はないので、今の時期にせっせとドライトマトを作ります。


また、産直市場に突然うるめいわしがたくさん並ぶ時があります。

たくさん買い込んで、アンチョビを作ります。


梅の時期にはもちろん梅干しや梅シロップを。


レモンの時期には、塩レモン、レモンシロップ。

ゆずの時期には、ゆず塩、ゆずジャム。



<長期保存食として、ゆずを楽しめるのでおすすめ。お漬物にしたりも◎>


そら豆のシーズンには豆板醤を仕込みます。2年前に仕込んだ豆板醤がなかなかいい味になってきました。


そうそう、お店も7年目となると、いきものがかりのkeiが育てる野菜も増えてきました。


赤大根や黒大根、かぶなどは冬に大活躍していました。

これからのシーズンは、パクチーや、ルッコラ、ナスやししとうなどの夏野菜へ。





通年でハーブもたくさん育てているので、サラダやマリネには使用する直前にとって使っています。


まだまだ生かしきれていない食べ物もたくさんあるのです。

そういった食べ物たちを少しでも多く、味わう人を増やし、ファンを作っていきたい。

五島の豊かさに触れてもらいたい。


そんな想いで、カフェte to ba <手と場>は今日もオープンしています。




あ、ちなみに今は甘夏ピール作りに大忙し。



茹でこぼしを3回行ったあと、アク抜きを水を変えながら2日。

砂糖で煮詰めてから3日間干して・・・


本当に手間暇かけてできあがった甘夏ピール、チョコレートも販売中です。

そして今年はちょっぴり贅沢なブラウニーにも。



生地の中にもたっぷりと甘夏を練り込んでいてしっとりリッチな味わいに仕上がりました。



te to ba <手と場>は、こんな感じで季節と共にお店をオープンさせています。

ぜひ五島の豊かさを味わいに来てください。


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