ハーブの種をまいて、それがある日、小さなかわいらしい芽を出す。
自分はこんなことで感動するのだと、心には水気があって、まだ救いがあるなと実感する。
新芽が育ち始めると毎朝、彼らに挨拶するのが待ち遠しい。
「がんばれ〜。おおきくなーれ」と毎日、心の中で声をかける。
何気なく植えた梅やらレモンの苗木。最初は小さな弱々しい枝にしか見えなかったモノが、気がつくと立派な樹木になっている。そしてある日、思いもよらぬことに実をつける。
お店ができたばかりの頃に植えたローズマリーの小さな苗は、今では通りの向こうからも目につくほどに堂々たる生命力を見せつけている。
そういったことを経験してしまうとだんだん、
園芸の世界にハマりこんでいく自分に気づく。
植物はいつもずっとそこにいて、五島の強烈な雨風と西日に耐えつつ、あるものは枯れ死んで、環境にうまく適応できたものは成長し、繁栄している。
これまでは、個別に植えたハーブや植物たちを別々の存在として愛でていたのだけれども、そろそろ「これはte to ba〈手と場〉の庭です」と自信を持って言えるような統一感のある世界を作りたくなった。なにしろ、植木鉢やら石やら廃材やらが無造作にとっちらかってたし、表側から見える目につくところには、適当に一年草が植えられていたりして、風景としてもせわしなかった。
それで・・・ありとあらゆる土を掘り起こして50-60cmの穴を掘り、岩やら石、ゴミを取り除き、漉すことに。よくこんな根っこやら石が大量に埋まったところで植物が育ったものだと驚いた。土をサラサラにしたら培養土や腐葉土と混ぜ合わせて「土作り」。
花壇も作った。
庭をどうにかしたいとずっと言っていたら、いろんな方がハーブの苗を持ってきてくれた。
これは三井楽でビストロを開業する予定の「ブーケガルニ」さんから頂いた月桂樹。
いつも庭造りやハーブについて多大なアドバイスをくださるAさんから頂いたレモンタイム。
そしてレンガのアプローチもつける。
まだまだ庭としては完成にはほど遠い。・・・というより、植物はそれぞれのペースで成長し、この土地になじみ、風景を変化させ世界を一緒に作り上げていくのだから10年単位の話だろうとは思う。だからロマンがある。
私も変化し、庭も変化する。あるものは死んで、私も死んで、けれども残っていく世界。
釣りも庭造りもどこか共通していると思う。生き物と自然が相手なので、自分がこれまでこんなに生きてきてなぜこんなことに気づかなかったのか・・・と驚くようなことがたくさん。
小さな変化に気がつく観察力と感性が少しずつ鍛えられる。
そして自分の手の持つ可能性にも気づかせてくれる。
人間の手は簡単に他の生命を奪い去る力を持っている。
同時に他の生命を活かす力も持っている。
破壊的な手と創造的な手。
みずみずしい知性が欲しい。
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